寺家村脇一(わきいち)


 源照派。坊主・古田照一。天明4年(1784)4月7日権成。

 嘉山利勢一、山田斗養一、坪井利寿一、戸沢芳一(与一)ら、多数の有力な検校の坊主である。

 明治25年刊行の渡辺知三郎著『空前絶後盲人之王 塙検校伝』では、塙保己一のエピソードとして次の逸話を載せている。

 〔塙保己一の〕門人なりける或る盲人某 瞽者のならひとて高利の金を貸つけて大に富みけるが 或時其手代が負債家の許に到りて 催促の末 其家の小児疱瘡にて臥したる夜着を引はぎて持帰へりたりとの由を聞きて 早速某盲人を呼びて其非を詰り遂に破門をなしけると 或ハ云 盲人ハ姓寺家村と云て後に検校になりしもの也と

 非道な振る舞いをして、師匠の塙保己一から破門されたという盲人は、後に寺家村という検校になったというが、もちろん事実ではない。 多数の弟子を検校に昇進させていることから、寺家村脇一には相当な財力があったと思われる。 同じ時代に生きた塙保己一と寺家村脇一は、当時の江戸市中の人々の目には、その生活ぶりなどが好対照と映っていたのであろう。


《2015年8月》

検校列伝

当道