菊岡楚明一(そめいち)


 寛政4年(1792)、京都の生まれ。
 師堂派。坊主・一山維清一。文化3年(1806)8月3日権成。弘化4年(1846)11月12日歿。 法名・奏天院菊岡前検校暢楽浄和居士。墓所・極楽寺(京都市下京区富小路五条下ル本塩竃町)。

 京都で活動した地歌三絃家。京流手事物を多数作曲。 主な作品に、『磯千鳥』、『今小町』、『梅の宿』、『楫枕』、『桂男』、『笹の露』、『園の秋』、『竹生島』、 『茶音頭』、『長良の春』、『舟の夢』、『御山獅子』、『夕顔』(以上、八重崎検校が箏手付け)、 『儘の川』(松野検校が箏手付け)、『芥子の花』(八重崎門下の二世松崎検校が箏手付け)など。


『世界盲人百科事典』の菊岡楚明一

 〔菊岡検校〕 1792(寛政4)年,京都に生まれ,1847(弘化4)年に56歳で世を去った。 松浦検校,八重崎検校,石川勾当らとほぼ同時期に京都で活躍し京都派箏曲の黄金時代を作った人である.

 磯千鳥:古今集の「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の渕ぞ今日は瀬となる」という和歌をもとにして転変不留諸行無常の人生を嘆き, 永久不変の仲を誓い合いながらも運命には逆らいきれず,いまはひとりわびしく冬の暁をかこつという内容で,どことなく沈んだ美しい旋律をもっている曲である. 京都派地唄箏曲(三曲家の間では,京物と呼ぶ)のうちで,最も整った形式を備えている.

 笹の露:俗にこの曲は「酒」と呼ばれている. それは歌詞に酒についての聖者の言葉や古事がうたい込まれ,酒の効用をならべたはやしことばで結んでいるからである. 楽しい曲であるが,かなりの難曲である.

  ―― 『世界盲人百科事典』,p.105


《2014年1月》

検校列伝

当道