山田斗養一 2


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源照寺

 東京都葛飾区高砂7-13-34

 浄土宗。江戸浅草鳥越に創建。明暦の大火により山谷新鳥越町(現在の台東区清川1丁目付近)に移転。 さらに、関東大震災により昭和3年(1928)年、現在地に移る。

山田検校墓志

 源照寺の本堂のすぐ後ろ側にある。

山田検校の墓碑

楽ニ古今之異有リ。声ニ雅俗之別有リ。然リト雖モ人情ヲ動シ風俗ヲ移易スル有リ。其ノ用一也。 斉ノ亡ブル。伴侶行路難ヲ歌ヒ。陳ノ亡ブル。玉樹後庭花ヲ歌フ。当時其声ノ淫ヲ咎メヌ。 然リト雖モ唐ノ起ル也。楽府其ノ二曲ヲ廃セズ。而シテ貞観ノ盛治。後世比無シ。然ラバ則チ存亡興廃之術。君徳ニ在リテ声曲ニ在ラズ。 鄒ノ孟子曰ク、今之楽ハ猶古之楽ノゴトシト。信ナル哉言ヤ。 近世瞽師琵琶ヲ業トスル者有リ。筝ヲ業トスル者有リ。其ノ筝ヲ以テ業ト為ス者ハ。八橋生田ノ二師。最モ盛名有リ。天下其ノ学ヲ伝フ。 其ノ今ニ鳴ル者。山田検校ヲ最ト為ス。 検校初メ山田松黒ニ学ビ。特見青藍之誉有リ。後盡ク学ヲ廃棄シ。別ニ機軸ヲ出シ。我ヨリ古ヲ作ス。其ノ自ラ制スル所ノ歌曲。百ヲ以テ数フ。 其ノ声雍容醞藉。凄婉幽峭。龍吟ジ鳳鳴クガ如ク。鶯囀リ鶴唳クガ如ク。思婦之嘆ズルガ如ク。哀蛩之咽ブガ如シ。 聞ク者感動セザル莫キ也。公侯之家ヨリ。下閭巷ニ至ルマデ。一時筝ヲ学ブ者。大半其ノ門ニ出ヅ。 貴遊饗宴。豪富会集。必ズ検校ヲ迎致シテ以テ其ノ新声ヲ奏セシム。座間聞ク者以テ栄ト為スニ至ル。 新声里閭之間ニ流伝シ。妓娼酒ヲ勧ム。其ノ歌フ所ノ者多ク検校ノ製スル所也。 是ニ於テ瞽師ノ旧曲ヲ伝フル者。其ノ能ヲ忌ミ其ノ名ヲ嫉ミ。皆其ノ新声ヲ以テ旧調ヲ変ズルヲ咎ム。謗議喧然タリ。 然リト雖モ終ニ其ノ名ヲ損スル能ハズ。於乎亦盛ナル哉。 検校諱ハ斗養一。幽樵ト号ス。本姓三田氏。考諱ハ了任。母山田氏。宝暦丁丑四月二十八日生ル。 幼ニシテ明ヲ喪フ。性音律ヲ好ミ、長ジテ諸家ニ従ウテ筝ヲ学ブ。後山田松黒ヲ以テ師トス。師ノ姓母ノ族ト合スルヲ以テ遂ニ山田氏ヲ冒ス。中田氏ヲ娶リ男子四人有リ。 文化丁丑四月十日病ンデ卒ス。享年六十一。浅草山谷源照寺ニ葬ル。謚シテ覚凉院殿一誉響和斗養居士ト曰フ。 検校人ト為リ聡慧。温柔和順従容迫ラズ。坦懐曠度。物ト忤フ無シ。故ニ人亦能ク之ヲ愛慕ス。又至性有リ。其ノ親ニ孝ス。年五十ヲ過ギ其ノ考猶存ス。奉養衰ヘズ。 起居飲食其ノ意ノ適スル所ニ随フ。其ノ歓心ヲ得テ止ム。能ク其ノ学ニ通ジ。能ク其ノ名ヲ成ス。予其ノ偶然ナラザルヲ知ル。 其ノ徒数千人。其ノ高足タル者数人。皆能ク其ノ学ヲ伝フ。又能ク一時ニ鳴ル。世之ヲ称シテ山田流ト曰フ。古之人一伎之能ヲ卑シトセズ。其ノ能ヲ以テ名ヲ成ス也。 検校ノ如キ其ノ伎ヲ以テ一時ヲ風靡ス。幾古之神瞽ニ庶ス者ヤ。 予検校ト居ヲ隣シテ相好シ。其ノ子弟等其ノ墓ニ表センコトヲ請フ。其ノ知ル所ヲ録シ。之ニ係クルニ銘ヲ以テス。銘ニ曰ク。
  師幼ニシテ明ヲ喪フ。長ジテ音声ニ通ジ。能ク新曲ヲ製シ。能ク後生ヲ導ク。一時風靡シ。声名雷轟ス。
  其ノ伎神妙。誰カ有リテ能ク争ハン。嗚呼世人。目明ニシテ心盲。師乎師乎。目盲ニシテ心明ナリ。
  文化十五年戊寅四月加賀太田元貞才佐撰

 (東京都葛飾区 源照寺) = 原漢文 『本朝盲人伝』にも収録 

 上記の太田錦城の文は墓碑の正面に細かな字で刻まれている。墓碑の右側面には

        文化十四年丁丑四月十日卒
  覚凉院殿一誉饗和斗養居士
        前総録山田検校之墓

という文字があり、また左側面には、

  嘉永二年己酉四月建之

の文字の下に、

  重元幸三郎孝恕
  山登検校松和一
  高木政次郎樸恒

と、墓碑の建立者3人の名が連記されている。 重元幸三郎孝恕は山田検校の実子、山登検校松和一は山田検校の高弟で山田流の後継者である。


山田検校の碑を移すの記

 源照寺の山門近く、本堂に向かって左手前にある。

山田検校の碑を移すの記の碑

山田検校の碑を移すの記
大正十二年九月一日 関東地大に震ひ 所在火を発し 帝都殆ど灰
燼に帰す 而して浅草区吉野町源照寺も亦其の災に罹れり 寺に
山田流箏曲の祖山田検校の霊龕及び墓碑あり 龕 寺と倶に焚す 
而して碑纔(わずか)に免る 昭和三年四月 官特別土地計画に遵ひ 街衢
を整理し 寺域に一部適ま其の収用する所となり 域内狭隘を告
ぐ 因て地を南葛飾郡新宿町廻田に卜し 再び寺を建つ 是に於て
相州江島山田検校銅像維持会員相謀りて 資を捐て碑を其の寺
に移し 永く旧制を存して祖霊を慰む 乃ち石を樹てて其の由を
録し 且つ捐資者の姓名を背に鐫し 以て併せ伝ふと云ふ
昭和三年六月  従七位勲八等中村一之助撰 林経明書

 碑の裏面には、墓碑の移転に協力した「捐資者」の名が刻まれている。

(上段)
山田検校銅像維持会長・従五位勲六等萩岡松韻
同 理事・従四位勲四等今井慶松
同 理事・権大教正高橋栄清
同 理事・楽器商岡戸竹次郎
同 理事・楽器商山田縫三郎
(中段)
権大教正上原真佐喜
町田杉豊
楽器商海保伝左衛門
今村修二
海保金次郎
(下段)
萩岡松韻・高橋栄清 主幹箏曲楽成会
今井慶松 主幹箏曲移風会
上原真佐喜 主幹箏曲真磨琴会
町田杉豊 主幹箏曲木の芽会


《2011年4月》

山田斗養一

山田斗養一 3

検校列伝

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